木がつなぐ未来──大阪・関西万博で注目の「木の建築」とサステナビリティ
木がつなぐ未来──大阪・関西万博で注目の「木の建築」とサステナビリティ

2025年、大阪・夢洲で開催される「大阪・関西万博」。その会場を歩くと、目に飛び込んでくるのは温かみのある木の質感、やさしい香り、そして自然とつながる空間の数々。
今回の万博では、木材を使った建築が目立ちます。ただの建材ではなく、“意味を持つ素材”として、各国・企業が木材の可能性を存分に表現しています。
この記事では、大阪・関西万博での木材の使い方を、「設計思想」「環境配慮」「施工上の工夫」「万博終了後の再利用」などの視点から紹介。そして、代表的なパビリオンの事例を通じて、私たちが木を通じて未来とどうつながっていけるのかを、わかりやすくご紹介します。
木を選んだ理由:「未来をつなぐ、循環型の素材」

木材はCO₂を吸収し、加工・使用している間も炭素を貯蔵し続けるサステナブルな素材。さらに、適切な森林管理をすれば、再生可能で地産地消も可能な“地球にやさしい”建材です。
大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」にふさわしく、木は「命の循環」「人と自然の共生」を象徴する素材として、建築の“語り手”になっているのです。
大屋根リング


「大屋根リング」は、万博会場をぐるりと囲む、全長約2キロメートルの巨大な木造建築物です。その規模は、世界最大級の木造建築物としてギネス世界記録にも認定されています。設計を手がけたのは、世界的に活躍する建築家・藤本壮介さん。彼は、「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を、このリングに込めました。大屋根リングは、伝統と最新技術が融合した、まさに日本の技術力と美意識を象徴する建築物です。
日本館:「木のリレー」が語る命のつながり

ホスト国・日本が手がける日本館では、CLT(直交集成板)を使った木のパネルが円形に立ち並び、その造形だけでも訪れる人を圧倒します。注目すべきは、その設計と使用後のストーリー。
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使用木材/工法: CLTパネルをボルトで固定。解体後に全国で再利用可能。
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万博後の活用: 解体された木材は提供地域に返却され、公共建築などに活用予定。
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メッセージ:「いのちと、いのちの、あいだに」というテーマを、“木のリレー”で視覚化。
木が巡り、人から人へ、地域から地域へと命をつなぐ。日本ならではの自然観と建築哲学が感じられる空間です。
ドイツ館「WA! Doitsu」:循環型経済を建築で体験

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使用木材/工法: スプルース(トウヒ)の木組み構造で円筒型建築が7つ連なる。すべてボルト接合で解体・再利用が前提。
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展示内容: 木廃材の再資源化や、廃棄物ゼロの循環経済を来場者自身が体験できる仕組み。
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メッセージ: 建築物そのものが循環の象徴。

木の使い方だけでなく、「どう再利用されるか」まで含めて考え抜かれており、まさに“循環”を体験できるパビリオンです。
オーストリア館:五線譜のような木のスパイラル

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使用木材/工法: ねじ止め・接着剤ゼロで組まれたスパイラル構造。木製スラットは何度でも組み直し可能。
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メッセージ: 木の造形で音楽の五線譜を表現。伝統と未来の融合を象徴。
木そのものが楽器のように響くデザインで、木が持つ表現力の豊かさをアピールしています。
住友館:森と都市をつなぐメッセージ

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使用木材/工法: 50年生のスギ・ヒノキ。薄板合板を用いた外装が特徴(合計約250㎥使用)。
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メッセージ: 「森から未来へ」。伐採した森に来場者が苗木を植える参加型の植樹プログラムも実施。
素材だけでなく、来場者が森づくりに関われる仕掛けがあり、“体験としてのサステナビリティ”が際立っています。
ブルーオーシャンドーム:紙と竹で「海の循環」を表現
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使用木材/工法: 紙管×ラミネート竹×CFRPのハイブリッド構造。
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メッセージ: 紙と竹の柔らかな素材感で“海の生命のつながり”を表現。
海洋問題に取り組む企業などが協力しており、循環型素材で構成された先進的なドーム型空間です。
各国パビリオンに見る「木の建築」の多様性
● チェコパビリオン:CLTで魅せる構造美と強度

CLTを使ったパビリオン建築の好例。幾何学的なデザインに木の温かみが融合し、構造そのものが“見せる建築”となっています。木造の可能性を押し広げた一棟。
● イタリアパビリオン:木で奏でる芸術空間

光、影、音と響き合う木の使い方が特徴的。イタリアらしい芸術性が、木のテクスチャや香りを通じて表現されています。職人技と木のポテンシャルが光ります。
● ウズベキスタンパビリオン:木柱の森が知の庭に

280本以上のスギ材の柱が「知識の本棚」を表し、訪れる人が文化や歴史に触れる空間を演出。使用後は木材を母国に持ち帰り、学校建設に再利用される予定です。
万博後も続く「木の物語」
大阪・関西万博の特徴は、「終わってからが本番」という考え方。木材を使った建築の多くは、解体後に再利用されることを前提に設計されています。
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地域の学校や図書館、公共施設へ木材が戻る
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解体後の木材が家具や遊具、アート作品に生まれ変わる
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海外パビリオンの木が母国の新たな建築で再活躍する
万博の感動や記憶が、かたちを変えて長く人々の暮らしに寄り添っていく。そんな未来を思わせる取り組みです。
木とともに“いのちをつなぐ”建築へ
大阪・関西万博で見られる木の建築は、単なる空間の演出ではなく、命や自然とのつながりを意識した「新しい社会への問いかけ」です。
木はやさしくて、力強い。そして未来を託せる素材。
家族で万博を訪れたときには、ぜひ「木」に注目してみてください。どこから来た木か、どんな物語を持っているのか、そしてこの先どう生きていくのか。そんな視点で会場を歩くと、きっと見え方が変わってくるはずです。
木が伝える未来の物語。あなたも、その一歩を感じに行ってみませんか?
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