山手の坂道に佇む、小さな洋館の物語 〜横浜ブリキのおもちゃ博物館 閉館前レポート
山手の坂道に佇む、小さな洋館の物語
〜横浜ブリキのおもちゃ博物館 閉館前レポート

2025年8月17日、長年親しまれてきた「横浜ブリキのおもちゃ博物館」が山手の街から姿を消します。閉館の知らせを受け、どうしてもその佇まいを目に焼き付けておきたくて、現地を訪れました。
白い洋館と緑の縁取り

博物館は、山手本通り近くの坂道沿いにひっそりと建っています。白い外壁に緑色の窓枠や破風板、小さな切妻屋根の玄関ポーチと数段の階段――まるで絵本に出てくるような素朴な“山手の西洋館”です。かつては空き家だったこの洋館が、今では世界中から集められたブリキのおもちゃで満たされ、訪れる人の胸をときめかせてきました。のちには隣の同じく洋館の、クリスマスショップを併設するなど、街角の小さなテーマパークのような存在になりました。


北原照久さんと博物館の誕生秘話

この博物館を開いたのは、ブリキのおもちゃコレクターとして知られる北原照久さん。最初は青山や原宿、代官山での開館を考えていたそうですが、家賃の高さに断念。そんなとき、高校時代の同級生が山手で古い洋館を利用した店を始めていることをきっかけに、「自分もこの街でやってみよう」と決意します。教会のすぐそばにあった木造洋館の空き家に巡り合い、借りることに。
当時の建物はかなり傷んでいて、壁も床もボロボロ。それでも仲間たちの協力を得ながら少しずつ改装を進め、1986年4月8日、ついに「横浜ブリキのおもちゃ博物館」が誕生しました。オープン当初から、この小さな洋館は大人も子どもも夢中になる空間として愛されてきました。
閉館、そして新しい時代へ

しかし、築年数の経過とともに建物の老朽化が進み、耐震性の問題から「このままではお客様を入れるのは危険」と判断されたそうです。そのため、現行の山手町での営業は2025年8月17日までとし、秋には、みなとみらいに新しい博物館として移転オープンする予定だそうです。
訪れて感じたこと
玄関を開けると、あたたかな木の内装とおもちゃの色彩が迎えてくれました。壁際に並ぶガラスケースの中で、古き良き時代のブリキのおもちゃたちが静かに輝いています。建物の隅々にまで、人の手で直し、大切に使い続けてきた痕跡が残っていました。この空間がもうすぐ閉じられると思うと、とても残念です。

この木造建築の良さを保存するためには、大規模は改修工事が必要となり、今の良さがなくなってしまう可能性もありますし、莫大は費用がかかります。木造の建物を「使い続ける」ことの課題がここにもありますね。

お盆休み中は、今までのお客さんたちが、閉館前の博物館を一目見ようと連日賑わっているそうです。

新しい場所でも、きっとこの博物館らしい温かさは受け継がれるはず。でも、この木造の洋館での時間は、ここでしか味わえない特別な記憶として、訪れた人たちの心の中に残り続けるでしょう。
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